ひとりのみどりごが私たちのために生まれる。ひとりの男の子がわれわれに与えられる。主権はその肩にあり、その名は、「不思議な助言者、力ある神、永遠の父、平和の君」と呼ばれる。 イザヤ書9章6節(p1181)
序 論)イスラエルの国はソロモン王の後に、北王国イスラエルと南王国ユダに分かれました(BC930年頃)。以来周辺の大国からの圧迫に苦しめられ、もともと四国ほどの大きさしかない国が、さらに領土を失っていきます。ついに北イスラエルはアッシリアに滅ぼされ、住民は捕らえ移されてしまいました(BC723年頃)。それゆえこの地域は「異邦の民のガリラヤ」(1)と呼ばれます。
神の民が光を失って暗闇の中にいました。その頃、預言者イザヤは、やがて救い主が来られることを語ります。
本 論)
1、闇の中に光を見る
かつてイザヤは、光が見えないことに不安や苛立ちを感じ、嘆きの声を上げたことがありました。「地を見やると見よ、闇と苦しみ。光さえ雨雲の中で暗くなる。」(イザヤ書5章30節p1176)
そして8章22節にも記されているように暗闇しか見えません。
しかし、9章に入ると、預言者を取り巻く状況は変わりませんが、彼の語るメッセージは一変します。神様との交わりを通して、霊的洞察は深められ、彼は光を見ました。
イザヤは「異邦の民のガリラヤは栄誉を受ける。」(1)と預言しました。これは、やがて闇の支配から解放されるとの宣言です。神の救いの光は、暗黒の最も深い所から輝き始めました。
ガリラヤのナザレという小さい村で成長された主イエスは、30歳ごろ、荒野で悪魔の試みにあわれ、それに勝利されました。(マタイの福音書4章1-11節p5) その後、一度、ガリラヤに退かれました。それは福音宣教をガリラヤから始められるためでした。(マタイ4章12-17節)
福音書記者のマタイはこれをイザヤの預言の成就だと語ります。「これは、預言者イザヤを通して語られたことが成就するためであった。」(マタイ4章14節)
主イエスは復活された後も、弟子たちにご自分はガリラヤに先に行ってあなたがたを待つと言われました。
「しかしわたしは、よみがえった後、あなたがたより先にガリラヤへ行きます。」(マタイ26章32節p57)
主イエスがガリラヤの地を大切にされたように、神様は苦しんでいる人々、虐げられている人々をお忘れになることなく,顧みて下さっています。
今の世も、闇のように思えたとしても、私たちが神様と主イエスに心を向け、主を求めていくとき、希望と命の光を見出すことができるのです。
2、救い主のみ姿を見る
続いて預言者イザヤはユダヤに対して長く続く略奪のため、収穫の喜びさえ忘れていた者たちに刈り入れの喜びが来ると語ります。(3)
「ミディアンの日」(4)は、ユダヤの士師ギデオンが、3万2千人のうちから勇気のある300人を選んで、ミディアン人を打ち破った日のことです。それは、人間の力ではなく神様の御力により頼んだゆえの勝利でした。(士師記7章1-25節p438)(BC1100年代)
やがて神様のみわざによって平和がもたらされ、軍備がすべて放棄される日が来ます。(5)
そのようなことは人間の目にはありえないことに思われますが、6節でそれがメシア(救い主)誕生によって可能になると告げられます。
「ひとりのみどりごが私たちのために生まれる。ひとりの男の子が私たちに与えられる」、と告げたイザヤは約700年後にこの地上にお生まれになる救い主の御姿を見たのです。
「主権はその肩にあり」(6)とあるようにこのお方が世界を統べ治められるのです。
救い主は「不思議な助言者」英訳は「Wonderful Counselor ワンダフル・カウンセラー」です。どんなときも、私たちと共にいて下さり、必要なときには相談相手になって下さる方。私たち一人ひとりに対して大きな計画を持たれ、聖霊とみ言葉によって導き手となって下さるお方です。
救い主は「力ある神」であり、神ご自身です。
「永遠(えいえん)の父」、「父」という語は神と神の民イスラエルに対する関係を示しています。救い主はイスラエルの民にとってあわれみに満ちた保護者です。
「平和」の原語(ヘブライ語)は「シャローム」でこれは欠けのない満ちたりた状態を表す言葉であり、その根本は神との平和です。
争いは誰でも始めることができますが、平和をつくることは困難なわざです。しかし、「平和の君」である主は、十字架と復活によって、神と人との間、人と人との間に平和をもたらしてくださいます。
「ダビデの王座に就いて」(7)、救い主はダビデの子孫として生まれるという預言です。この通りに主イエスは、ダビデの子孫である、ヨセフの子として誕生されました。
結 論) 「万軍の主の熱心が…」(7)、とあるように父なる神様は、熱愛をもって、私たちを愛され、その御約束通りに救い主を送って下さいました。
ユダヤのダビデ王朝の歴史は、約400年でした。(BC1010年~586) 地上の王朝(王の支配)はいつか終わるときが来ます。しかし、大能の神イエス・キリストは主を信じ従う私たちと共に永遠にいて下さるのです。
このように、素晴らしい救い主が御誕生して下さったことを心から感謝してクリスマスを待ち望みましょう。