ヨハネの福音書19章25~30節

酸いぶどう酒がいっぱい入った器がそこに置いてあったので、兵士たちは、酸いぶどう酒を含んだ海綿をヒソプの枝に付けて、イエスの口もとに差し出した。イエスは酸いぶどう酒を受けると、「完了した」と言われた。そして、頭を垂れて霊をお渡しになった。ヨハネの福音書19章29-30節 (p.226)

序 論)
主イエスは総督ピラトによって十字架につけられました。(16)
 十字架のすぐそばで、主イエスの衣服を四人の兵士たちが分け合い、下着はくじ引きにしました。(23-24)
 その後、十字架の上で主が語られたみことばを通して示されることは…

本 論)
1.母マリアと主に愛された弟子
 主イエスに従って来た四人の女性は、十字架のそばに立っていました。(25)
 その中に主の母マリアがいました。
 主は母とご自分が愛する弟子を見られました。(26)
 「愛する弟子」とは、この福音書を書いたヨハネだと考えられています。
 主イエスは母マリアにこの弟子は「…あなたの息子です。」と言われました。(26)
 そして、彼に「…あなたの母です」と仰り、マリアをゆだねられました。(27a)
 主のこのことばに従い、この弟子は母マリアを引き取りました。(27b)
 このことは主の十字架のもとで、血縁関係に基づく人間的な交わりとは異なる、キリスト者の交わりが生まれたことを示しています。
 私たち一人ひとりも「主から愛されている者」です。そして、父なる神様のもと、主イエスを長子として兄姉の交わりが生まれます。(ローマ人への手紙8章29節310)
 かつて、主イエスはカナの婚礼のとき、母マリアに「女の方。…」と呼びかけて話されたことがありました。(ヨハネの福音書2章4節p178)
 そのときは主イエスの「時」はまだ来ていませんでした。
 そして、十字架にかかられる前の夜、弟子たちの前で父なる神様に祈られました。(ヨハネの福音書17章1節p219)
 主が祈られた「時」、十字架で死なれる時がついに来たのです。

2. 救いのみわざの完了
 
主イエスは、「わたしは渇く」と言われました。(28)
 これは旧約聖書の言葉の成就でした。(詩篇22篇15節p953、詩篇69篇21節p1003)
 主のことばを聞いたローマ兵は、「酸いぶどう酒」を主の口もとに差し出します。(29) (ぶどう酒から作った酢を水で薄めた兵士たちの飲み物)(29)
 酸いぶどう酒をお受けになった直後、主イエスは「完了した」と言われました。(30a)(「成し遂げられた」新共同訳)
 神様が主イエスによって成そうとされた救いのご計画が ここに完遂されたのです。
 主が神様にささげられる完全ないけにえとなられ、今、ご自身をささげ尽くされました。
 その確証として主イエスは「頭をたれて霊をお渡しになった」のです。(30b) (ルカの福音書23章46節(p171)にはこの直前、主イエスは「父よ、わたしの霊をあなたの御手にゆだねます」と祈られたことが記されている。)

結 論)父なる神様はすべての人を罪から救うために御子イエス様を世に遣わされました。
 主イエスはその贖いのみわざを十字架での死によって完全に成し遂げてくださいました。(へブル人への手紙7章27節p445)
 それは「ただ一度」なされた完全な救いです。
 私たちは罪からの救いのために他の方法や助けを求める必要はありません。ただ主イエスの成された救いのみわざに感謝し、主を信じ、心に受け入れることにより、罪赦されるのです。
 主のみことばを黙想し、十字架の恵みをさらに深く覚えつつ、このレントのときを過ごしましょう。

 (参考)
    『黙想 十字架上の七つの言葉』(加藤常昭著)

  『十字架の七つの言葉』(西谷幸介著)

十字架の上の七つの言葉

①「父よ、彼らをお赦しください。彼らは、自分が何をしているのかが分かっていないのです。」(ルカの福音書23:34)

②「まことに、あなたに言います。あなたは今日、わたしとともにパラダイスにいます。」(ルカの福音書23:43)

③「女の方、ご覧なさい。あなたの息子です。」(ヨハネ福音書19:26)
 「ごらんなさい。あなたの母です。」(ヨハネ福音書19:27)

④「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか。」 (マタイの福音書27:46)(マルコの福音書15:34)

⑤「わたしは渇く。」(ヨハネの福音書19:28)

⑥「完了した。」(ヨハネの福音書19:30)

⑦「父よ、わたしの霊をあなたの御手にゆだねます。」

(ルカの福音書23:46)