すると、試みる者が近づいて来て言った。「あなたが神の子なら、これらの石がパンになるように命じなさい。」イエスは答えられた。「『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばで生きる』と書いてある。」
マタイの福音書4章3-4節 (p5)
序 論)主イエスがバプテスマのヨハネから洗礼を受けられたとき、聖霊が鳩のように主の上に降られました。(3章16節p4)
その後、聖霊は主を荒野に導かれました。(1)
そこで起こった出来事を通して示されることは…
本 論)
1.悪魔の試み
主イエスは荒野で断食して祈られました。(2)
そこに試みる者(誘惑する者)が近づいて来ました。(3) 悪魔は主イエスが神の子であることを否定せず、むしろ「あなたが神の子なら、…」と誘います。
悪魔はあなたが奇跡を起こす力を用いて自らの飢えを解決し、飢えている人々を助けるなら、メシア(救い主)としての使命を容易に果たせるではないかと味方を装って主に勧めました。
しかし、主イエスは申命記8章3節(p329)のみことばによってそれを退けられました。(4)
旧約時代、モーセに率いられてエジプトを出たイスラエルの民は、荒野で40年間さまよいました。(出エジプト記、民数記等)
それはエジプトから解放してくださった神様を彼らが信頼せず、つぶやいたからでした。
しかし、その中でも神様はマナを与えて養われ、彼らは神様の真実な恵みを経験しました。(出エジプト記16章13-31節p128)
そして、パン(食物)も大切であるが、パンを与えて下さる神様を知り、神のみことばによって養われることを学んだのです。
ここでの主イエスに対する悪魔の誘いは、神様への信頼を抜きにして自分の力でパンを得ることへの誘いでした。
2.みことばによって試みに勝たれた
次に悪魔は主イエスをエルサレム神殿の屋根に立たせ、 再び「あなたが神の子なら、…」と詩篇91篇11-12節 (p1031)の言葉を利用して試みます。(5-6)
主はこのときも申命記6章16節(p326)のみことばによって誘惑を退けられました。(7)
これは飲み水がなかったイスラエルの民がモーセにつぶやいたことに対して神様が語られたみことばです。(出エジプト記17章1-7節p130)
もし、主イエスが自ら危険な状況を作り出し、神様を自分の思い通りに動かそうとなさるなら、神の主権を犯すことになります。
主は誘惑を退け、神の主権に自らを委ねることを通して どんなときも神様を信頼して歩むことを示されたのです。
三度目に悪魔は、主イエスを高い山に連れて行き、地上の王国の魅力的な繁栄を見せました。
そして、「もしひれ伏して私を拝むなら、これをすべてあなたにあげよう」(9)と言います。富と権力で地上に神の国を打ち立てるようにという誘惑でした。悪魔に服するなら、富と力を手に入れることが出来るとの誘いです。
しかし、主イエスは、人々を罪から救い、神の国に導くために来られた救い主です。
主はこのときも申命記6章13節(p326)のみことばを引用されサタン(悪魔)の提案を拒絶されました。(10)
礼拝と奉仕は真の神様にのみささげられるべきものです。
ついにサタンは主イエスから離れました。(11)
主イエスは悪魔の試みに打ち勝たれ、公の宣教の働きを 開始されます。
結 論) この後も、悪魔は主イエスに十字架への道を行かせまいと働きかけてきます。(マタイ16章23節p34)
しかし、主は父なる神様のみこころに従い、十字架で死なれ、復活し、救いを成し遂げてくださいました。
荒野で主イエスは聖霊により頼み、みことばによって悪魔の試みに打ち勝たれました。
私たちも聖霊の力と導きをいただき、みことばによって様々な試みを乗り越え、誘惑を退けることができます。
神様を礼拝し、祈り、聖書のみことばを心に蓄えつつ主に仕えてまいりましょう。
(参考)
「この三つの誘惑はイエスにとって、いかにして世を 救わんかを試す誘惑であった。①飢える民衆にパンを与えんか。②奇蹟をもってまず人心を把握せんか。③権力を手にした後、民を教化するか。…結局、イエスは父が定めた十字架の道を取られたのだ。」(内村鑑三(1861-1930)『聖書講義』)
「祈り・黙想・試練によって聖書を読みなさい。」
(ルター(1483-1546)
『ドイツ語著作全集第1巻への自序』)
「わたしはここ数年来聖書を2回通読している。 聖書が大きな巨木で、すべての言葉が枝であるとしても、すべての 枝を訪ねて、それが何であるか、何が含まれているか探りたい」 「聖書は、神の賜物や力に満ちている。・・・一言で言えば、聖書は、一切の試練や苦痛の際にも慰安に満ちた最高最善の書籍である。 聖書は、単なる人間の理性が把握し得るのとはるかに違って、信仰、 希望、及び愛を見たり聞いたり感じたりすることを、われらに教えるのだ」
(ルター『卓上語録』)