ところが、彼らがそこにいる間に、マリアは月が満ちて、
男子の初子を産んだ。そして、その子を布にくるんで飼葉桶
に寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。 ルカ2章6-7節 (p.110)
序 論)ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(1)は、ユリ
ウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)亡き後の内戦を鎮
圧して、「ローマの平和」を確立した人物です。この人の
成し遂げたローマ帝国統一と交通網の整備のおかげで、後
に使徒パウロたちが、ギリシヤ、ローマまで自由に旅をし
てキリストの福音を伝えることができました。
主イエスは、この皇帝アウグストゥス(オクタヴィアヌ
ス)(BC63-AD14、在位BC27-AD14)の治世の時代に、
地上に誕生されました。ご降誕の経緯と私たちに示される
ことは…
本 論)
1.神様の御手による導き
皇帝アウグストゥスが「全世界の住民登録をせよとの勅
令」(1)を出しました。その目的は、住民登録と人頭税の課
税、そして戦時における徴兵のためでした。
その勅令によって、ガリラヤのナザレに住んでいたヨセ
フとマリアは、遠いユダヤのベツレヘムまで旅をしました。
それは約140キロメートルの道のりであり、身重の体の
マリアにとっては困難な旅だったことでしょう。(3-4)
旧約聖書の中でキリスト(救い主)はダビデの子孫として
生まれ(Ⅱサムエル記7章12-13節)、「ダビデの町」(4)
ベツレヘムに生まれる(ミカ書5章2節)と預言されていま
す。「あなたの日数が満ち、あなたが先祖とともに眠りに
つくとき、わたしは、あなたの身から出る世継ぎの子をあ
なたの後に起こし、彼の王国を確立させる。 彼はわたしの
名のために一つの家を建て、わたしは彼の王国の王座をと
こしえまでも堅く立てる。」
(Ⅱサムエル記7章12-13節 p.551)
「ベツレヘム・エフラテよ、あなたはユダの氏族の中で、
あまりにも小さい。だが、あなたからわたしのためにイス
ラエルを治める者が出る。その出現は昔から、永遠の昔か
ら定まっている。」 (ミカ書5章2節 p.1586)
すなわち皇帝の勅令とヨセフの行動とは、図らずも神様
のご計画と導きの中で旧約聖書の預言を成就することにつ
ながっていきました。
皇帝アウグストゥスやシリアの総督キリニウス(2)は、ヨ
セフとマリアのことは全く知りませんでした。しかし、
神の御手は当時の権力者を通して、救い主がベツレヘムで
誕生されるように導かれたのです。
このことを通しても示されているように、世界の歴史や
すべてのことを本当に支配し、導き、用いておられたのは
主なる神様なのです。神様は今も、私たちに働きかけ、そ
れぞれの人生の歩みも目に見えない御手をもって導いてお
られるのです。
2. 低きに降られた神の御子
「月が満ちて」(6)は、マリアが臨月に入ったことを示す
と共に、神様の約束の成就、神の時の到来をも指し示して
います。
救い主は「飼葉桶」(7)で誕生されました。当時のそれ
は、石の床を掘った浅い穴であったと言われています。
誰もそこに真の王、救い主がお生まれになったとは思わな
い低い貧しい場所から主イエスのご生涯は始まりました。
父なる神様と共におられた御子が、その栄光の座を捨て
て、最も低いところにお生まれになったのです。それは、
人間としてすべての苦しみを体験され、貧しい者、取るに
足りないと思われていた者、弱い者たちを訪ねて行かれる
ためでした。
では、なぜ救い主の誕生が「飼葉桶」だったのでしょう
か。それは「宿屋には彼らのいる場所がなかったから」(7)
でした。(当時の宿屋(「客間」(口語訳))は、1階を家畜用
のスペース、2階を客間としていました。)
「場所がなかった」という言葉はイエス様が来られた「こ
の世」や人の心を象徴しています。当時のイスラエルのほ
とんどの人たちは主イエスを神の御子、救い主として受け
入れませんでした。そして、主イエスを十字架に追いやっ
たのです。このように「飼葉桶」は、主イエスがこれから
歩まれるご生涯と、その最後の十字架の死を暗示していま
す。
「この方(イエス)はご自分のところ(ユダヤの国)に来られ
たのに、ご自分の民(イスラエルの民)はこの方を受けいれ
なかった。」 (ヨハネの福音書1章11節 p.175)
イエス様は、私たちを罪から救うために最も低い十字架
にまで降って下さいました。
しかし、父なる神様はイエス様を死から復活させられ、
永遠の神の御子、救い主としてお立てになったのです。
結 論)復活され、今も生きておられるイエス様は、私たち
一人ひとりを訪ね、心の戸を叩いておられます。
「しかし、この方を受けいれた人々、すなわち、その名
を信じた人々には、神の子どもとなる特権をお与えになっ
た。」 (ヨハネによる福音書1章12節 p.175)
心を開き、「イエス様、あなたを信じ、心に受け入れま
す。私の心にお宿り下さい」と告白し、心の王座(中心)に
お迎えしましょう。
(参考)
July (英語の7月)(ジュリアス・シーザーの出生月に
ちなむ)
(ユリウス・カエサル BC100-44年)
August(英語の8月)(ローマ帝国初代皇帝
オクタヴィアヌスの尊称である
アウグストゥスより)
(オクタヴィアヌス BC63-AD14年)
(アウグストゥスはラテン語で「尊厳ある者」
という意味)
ウィリアム・シェークスピア(イングランドの劇作家)
(1564-1616)
『ジュリアス・シーザー』
『アントニウスとクレオパトラ』