ヨハネの福音書2章12~25節

鳩を売っている者たちに言われた。「それをここから持って
行け。わたしの父の家を商売の家にしてはならない。」

 
弟子たちは、「あなたの家を思う熱心が私を食い尽くす」と
書いてあるのを思い起こした。
                       ヨハネ 2章16-17節 (p.179) 

序 論) カナの婚礼の中で、最初のしるしを示された
主イエスは、その後、家族や弟子たちと共にカペナウムに
行かれました。(12) 
 過越の祭りが近づいた頃、主は弟子たちとエルサレムに
上られます。(13)主イエスが宮(神殿)でなされたことと
それを通して示されることは…

本 論)1、「宮きよめ」をされる
 過越の祭りには、離散していたユダヤ人もエルサレムに
集まりました。巡礼者たちは遠くから犠牲の動物を連れて
来ることができません。彼らのために「牛や羊や鳩を売っ
ている者たち」(14)がいました。
 また神殿にささげられるきよい硬貨と異邦の汚れた硬貨
を交換する「両替をしている者たち」もいました。
 主イエスは神殿で商売をする者たちを追い払われました。
(15)
 主イエスは、この「宮きよめ」と言われる行為を通して
当時の形式化していた神殿礼拝を批判されたのです。                  (イザヤ書29章13節p1211)
 主イエスは、宮(神殿)のことを「私の父の家」と呼ばれ
ました。(16) 本来、神殿は父なる神様を礼拝する所で
す。それを宗教指導者たちは「商売の家」(16)にしてし
まっていたのです。
 主の言動を見聞きした弟子たちが思い起したのは、詩篇
69篇9節(p1002)の言葉でした。(17)
「あなたの家」は神殿のことであり、「私を食い尽くす」は、
主イエスの死を示しています。
 神殿礼拝を大切に思われる主イエスの熱心が、後の主の
十字架の死を招いた理由の一つであったことをこの福音書
記者ヨハネは示そうとしています。

2、ご自身のよみがえり(復活)を予告された
 ここでの「ユダヤ人たち」は、主イエスに敵対する人た
ちのことです。彼らは、主イエスの言動を怒り、「しる
し」を求めて問い詰めました。(18)
 主はご自分の復活を暗示して答えられます。(19)(21)
ここでの「よみがえらせる」の原語は、「起こす、建て
る」という意味も含まれている言葉です。
 ユダヤ人たちは、この建物(神殿)を三日で建て直すとい
う意味に受け取りました。(20)
 かつてヘロデ大王が始めた神殿建設からこの当時で46
年経っていました。しかし、そのときでもまだ完成してい
ませんでした。
 それで弟子たちもこのときはまだ主イエスの真意を理解
できていなかったのです。(22)
 後の主イエスの死と復活の後、ようやく理解し、「聖書
(旧約聖書)とイエスのことば」を信じました。(22)
 このときから約40年後、AD70年にエルサレムの神
殿はローマ軍によって破壊されてしまいました。
 過越祭の間、「多くの人々」(エルサレムの民衆)は、
「イエスの行われたしるしを見て」、
「その名」(主イエスの御名)を信じました。(23)
 人々は、病の癒し等の「しるし」(奇跡的なみわざ)を見
て、主イエスを普通の人とは違う特別なお方として「信じ
た」のです。
 しかし、主イエスはご自身を求めるエルサレムの人々の
心の動機や彼らの信仰が不十分であることをよくご存じで
した。(24-25)
 すべての人の心をご存じである主イエスは人々がご自身
を神の御子、罪からの救い主として信じ、受け入れること
を願っておられたのです。

結 論)今回の箇所に記されているユダヤ人とのやり取り
がきっかけとなり、主イエスは彼らから神殿を冒とくした
という嫌疑をかけられることになります。
(マルコの福音書14章58節p.101、15章29節p.103)
「宮きよめ」の出来事が後の主イエスの十字架の死の
遠因の一つとなりました。
 しかし、主イエスは、この言葉(19)の通り、死の後、
三日目に復活されました。
 今、主イエスを信じる者は、聖霊によって一人ひとりが
神殿(神の宮)とされています。
         (Ⅰコリント人への手紙3章16節p.330)
 キリスト者の集まりが教会であり、教会は「キリストの
からだ」です。   (Ⅰコリント人への手紙12章27節p345)
 私たちは、キリストを通して父なる神様を共に礼拝し、
それぞれの歩みを続けていきます。