「…ですから、承知しておいてください。神のこの救いは、
異邦人に送られました。彼らが聞き従うことになります。」
…パウロは、まる二年間、自費で借りた家に住み、訪ねて
来る人たちをみな迎えて、少しもはばかることなく、また
妨げられることもなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・
キリストのことを教えた。
使徒28章28-31節 (p.296)
序 論)パウロは、ローマでも宣教の働きを続けました。
彼に「監視の兵士」(番兵)は付いていましたが、一人で
生活することを許されました。(16)
パウロの言行を通して示されることは…
本 論)
1、ユダヤ人に語る
ローマに着いて三日後、パウロは自分が住む家にユダヤ
人たちを招きました。(17a)
彼は自分がなぜ「…エルサレムで囚人としてローマ人の
手に渡された」のかを語ります。(17-20)
「イスラエルの望み」(20)とは、神様がイスラエルの
民に送られるメシア(救い主)のことです。ユダヤ民族は救
い主の到来を待ち望んでいました。パウロは、イエス様こ
そその救い主であることを伝えたのです。
ローマのユダヤ人たちはパウロとその裁判について何も
知らないと語りました。(21)
彼らはパウロが彼自身について語ったことに関心を持ち
ました。(22) そして、「この宗派」について聞きたいと
思いました。
集まるために都合の良い日が定められ、大勢のユダヤ人
が、パウロのもとにやって来ます。(23a)
パウロは、「神の国」について語り、「モーセの律法と
預言者たちの書」(「旧約聖書」のこと)によって、主イエス
について詳しく説明し、福音を語り続けました。(23b)
2、福音は異邦人に
パウロの語る福音を聞いたユダヤ人たちの反応は別れま
した。ある人たちは信じましたが、ほかの人たちは不信仰
にとどまりました。(24)
パウロは預言者イザヤの言葉を引用します。(25-27)
(イザヤ書6章9-10節p1176)
イザヤの言葉により、彼は、福音を聞いても受けれ入れ
ないユダヤ人たちの「決して悟ることはない」、そのかた
くなな心を責めました。
ユダヤ人が福音を受け入れないため、「神のこの救い」
(福音)は、異邦人に送られることになります。(28)
パウロの「…彼らが聞き従うことになります。」(28)
という言葉の通り、この後、多くの異邦人たちが福音を受
け入れ、福音はローマ帝国に、そして世界中に広がってい
ったのです。
パウロは軟禁状態のまま、「まる二年間」(30)を過ご
しました。この二年間は、彼にとって、極めて実り多い活
気に満ちた日々だったことでしょう。
おそらく、ここで「獄中書簡」と呼ばれる四つの手紙が
記されたのであろうと言われています。(エペソ、ピリピ、
コロサイ、ピレモンの四書簡)
パウロは「訪ねてくる人たちをみな迎えて」(30)、
イエス様が神の御子、救い主であることを大胆に語り続け
たのです。(31)
二年後以降、パウロはどこで宣教し、どうなったのかは
この書には記されていません。
一旦は釈放されてスペインにまで伝道の足を延ばし、再
び東方に向かった等、様々な伝承がありますが、確かなこ
とはわかりません。
どのような歩みであったとしても、神様はパウロの伝道
の働きを祝福されたのです。
結 論)エルサレムから始まった宣教は、ついにローマに
達しました。
福音宣教はこれからも続いていきます。本書のやや唐突
な終わりは、なお続く神のみわざ、聖霊のお働きを暗示し
ています。
今日まで福音は全世界に広がってきましたが、キリスト
教会2000年の歴史の中で「使徒の働き28章以後は誰
が書くのか」と問われ続けてきました。
私たちも「神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストのこ
とを教えた」というパウロの宣教の働きを引き継いで続け
ているのです。
主イエス・キリストが再び地上に来られる日まで、「使
徒の働き」は、続いていきます。
聖霊の助けをいただいて、私たちも宣教の働きにともに
加えさせていただきましょう。
(参考)
山室軍平(1872-1940)
日本人初の救世軍士官(牧師)、説教者。
著書『平民の福音』等