使徒の働き27章1~44節

しかし今、あなたがたに勧めます。元気を出しなさい。
あなたがたのうち、いのちを失う人は一人もありません。
失われるのは船だけです。私は神を信じています。私 
に語られたことは、そのとおりになるのです。
                      使徒27章22、25節 (p.292) 

序 論)パウロの審理は終わり、願い通りにローマに送ら
れることになりました。身柄は皇帝直属の親衛隊の百人隊
長ユリウスにゆだねられました。(1)
 著者ルカとアリスタルコ(使徒19章29節p275)が同行しま
す。数人の囚人も一緒でした。
 彼らのローマへの旅を通して起こった出来事とそれらを
通して示されることは…

本 論)1、暴風の中で
 カイサリアを出た小さな舟はシドンからルキアのミラに
到着します。(5) 百人隊長はここでイタリア行きの大型船
にパウロたちを乗り込ませました。(6)
 ミラを出港した船は強風に遭遇し難航します。そして、
クレタ島の「良き港」に着きました。
 季節は秋で、「もはや航海は危険な」(9)時期に入って
いました。パウロは出港は危険だと警告します。(10)
 しかし、百人隊長はそれを聞かず、多くの者は、西へ
80㎞の「港フェニクス」で冬を過ごしたいと主張しまし
た。(11-12 ) そして船出します。(13)
 い
ずれもパウロの洞察よりは、自分たちの経験と願望を
優先しました。
 間もなく「ユーラクロンと呼ばれる暴風」が島から吹き
降ろしてきました。(14)                 
 船は予定のコースを外れ、漂流してしまいます。(15-19)
「太陽も星も見えない日が何日も続き、暴風が激しく吹き
荒れるので」(20) 船は暗黒の海をさまよい、沈没寸前と
なりました。
 そのような中、パウロは、絶望のどん底にある同船者を
慰め、「…元気を出しなさい。…」と励ましたのです。(20-26)

2、船の座礁と命がけの上陸
 船は強い東風に吹きまくられて、アドリア海を西に進
んだ14日目の夜、水夫たちは危険な暗礁に近づいている
ことを察知し、四つの錨(いかり)を投げ降ろしました。(27-29)
 パウロは水夫たちの逃亡を止めるように百人隊長に進言
しました。そして、小舟は捨てられます。(30-32)
 座礁の危険もあり、人々は不安な長い夜を過ごしていま
した。夜明け頃、パウロは一同に食事をするように勧めま
す。(33-34)
 パウロは「髪の毛一本失われる」ことも許されない神様
の全能の御手を信じていたのです。(34)
 乗船者276人は、十分に食事を取り、上陸に備えて麦
さえも捨て、船を軽くしました。(37-38)
  船は砂浜を目指して進みましたが、浅瀬に乗り上げて座
礁します。(39-40)
 パウロが予告した通りに、船は使えなくなります。(10,22)
 一方、兵士たちは囚人が逃げるのを防ぐため、命を奪お
うとします。(42)
 しかし、百人隊長は、「パウロを助けたいと思い」、兵
士たちの計画を制止しました。(43) 
 ここでもパウロに対する神様の御守りが、他の人々にも
及んでいることが示されました。
 こうして全員が座礁した船から脱出し、泳いだり、板切
れや船の破片につかまって、「無事に陸に上がった」ので
す。(44)
 彼らは、船は失われましたが、全員救われるという神の
約束の成就を経験しました。

結 論)暴風の中でのパウロの確信は、主イエスから託さ
れた使命と主の臨在からくるものでした。(24)
 また、みことばによる約束は必ずその通りになると信じ
ていたからです。(25)
   「万事はわたしに告げられたとおりに成って行くと、
わたしは、神かけて信じている。」(25)」
 神様は、パウロを最後まで保護され、「異邦人の福音」
は、(「地の果て」の象徴である)ローマへ、全世界に伝え
られる道が開かれました。  (使徒1章8節p232)
 思い通りにいかないとき、私たちはどのように対処する
でしょうか。誰彼(だれかれ)の責任だと考えやすいもので
す。あるいは、すぐに意気消沈してしまいます。
 晴れの時は元気がよいが、嵐が来るとすぐに元気を無く
す弱い者です。
 しかし、このようなときも、主イエスは「元気を出しな
さい。…」と励まし、慰めを与えてくださいます。
 主イエスご自身とみことばの約束を信じ、私たちも試練
や逆境の中にある人たちに励まし、慰めを与える者となら
せていただきましょう。