使徒の働き25章23節~26章8節

「アグリッパ王よ。私がユダヤ人たちに訴えられているす
べてのことについて、今日、王様の前で弁明できることを
幸いに思います。…神が死者をよみがえらせるということ
を、あなたがたは、なぜ信じがたいこととお考えになるの
でしょうか。」
                       使徒26章2、8節(p.289) 

序 論)総督フェストゥスは、アグリッパ王に囚人となっ
ていたパウロについて話しました。(21)
 アグリッパ王は、パウロとの会見を求めます。(22)
 翌日、アグリッパ王と妹のベルニケはパウロと会見しま
す。(23)
 フェストゥスやアグリッパ王の言動とパウロの弁明を通
して示されることは…

本 論)1、アグリッパ王の前に立つ
 アグリッパ王、総督フェストゥス、そして千人隊長や町
の有力者たちも集まりました。(23a)
 フェストゥスは、総督としてカイサリヤに着任したばか
りでした。それでこの会見を総督としての威光を示す絶好
の機会だと考えたかもしれません。
 彼は、パウロに関して、これまでの経緯と会見を開いた
理由を王たちに説明しました。(24-27)
 パウロは、カエサル(ローマ皇帝)に上訴していましたか
ら(11-12)、総督がパウロをローマに送って裁判を開く
ことはすでに決まっていました。
 フェストゥスは、パウロをローマに送致するに当たって、
もう少し「確かな事柄」を「わが君」(ローマ皇帝)宛に書
き添えたいと願っていたのです。(26)
 この「使徒の働き」を記したルカは、「大いに威儀を正
した」アグリッパ王と鎖につながれたままで王の前に立つ
パウロ(23b)(26章29節)の姿を対照させています。
 このときはアグリッパ王や総督、町の有力者たちの方が
栄えているように見えましたが、この後、ユダヤの国は滅
びてしまいました。(AD70年)
 それに対し、神様はこの後もパウロを主のため、神の国
のために大いに用いられました。パウロの手紙や「使徒の
働き」等、新約聖書は2000年間読まれ続け、世界の歴
史に大きな影響を与えました。そして今も主イエスを証し
続けています。

2、アグリッパ王の前で語る
 パウロはギリシア人のように「手を差し出して」(1)、
弁明を始めます。
 パウロは弁明できることを「…幸いに思います」と言
い(2)、アグリッパ王に「…あなたはユダヤ人の慣習や問
題に精通しておられます。…」(3)と語りかけて、王に少
しでも自分の弁明に耳を傾けさせようとしました。
  パウロはまずかつての自分のことを話します。
 パウロの「若いころからの生き方」(4)は、エルサレム
のユダヤ人社会に知れ渡っていました。
 彼は「パリサイ人」として、学び、訓練を受けました。
 そして、自分は「父祖たちに与えられていた約束」(旧
約聖書に記されている神がなされた約束)に希望を持って
いることを語ります。(6)
「私たちの十二部族」(7)は全ユダヤ民族を示す言葉です。
 パウロがここで言う「この望み」(7)とは、「神が使者
をよみがえらせるということ」(8)、「死者の復活」(24
章15節p286)の希望でした。
 ユダヤ民族が待ち望んでいるこのことのために自分は訴
えられている、とパウロは訴えの不当性を主張しました。
 それは、無罪を勝ち取るためではなく、福音の信仰が、
神の民(イスラエルの民)が求め続けてきたものであること
であることを弁明するためでした。

結 論)パウロはこの後、「神が死者の中から復活させられ
た方」、復活の主イエスとの出会いをアグリッパやフェ
ストゥスたちに証ししていきます。
             (使徒の働き26章9-18節)
 このようにパウロは、彼らの前で堂々たる弁明を行い、
主イエスの復活、福音を伝えました。
 主イエスの十字架と復活による救いをユダヤ人、異邦人、
王たちに伝えることが、主がパウロに与えられた使命でし
た。          (使徒の働き9章15節p251)
 そして、私たち一人ひとりのためにも主イエスは地上に
来られ、十字架で死なれ、復活されたのです。
  パウロが受け、伝えた福音を私たちも信じ、心に留め、
周りの人たちに証しつつ、主から与えられたそれぞれの使
命や務めを果たしてまいりましょう。
                       (Ⅰコリント15章3-8節p349)