イザヤ書46章1~4節

わたしはあなたがたの年老いるまで変らず、
白髪となるまで、あなたがたを持ち運ぶ。
わたしは造ったゆえ、必ず負い、
持ち運び、かつ救う。
イザヤ書46章4節 (p.1010)

序 論) 本章には、イザヤ書44章、45章で語られた
「わたしのほかに神はない」という主題が繰り返されて
います。今回の箇所は、偶像の神々と真の神の違いが語ら
れています。この箇所を通して示されることは…

1,人間が持ち運ぶ偶像の神々
  「ベル」と「ネボ」(1)はバビロンで拝まれていた偶像の
神々です。それらは祭りのたびごとに家畜の引く馬車に乗
せられてあちこちに運ばれていました。神々の像がただの
 「疲れた獣の重荷」となっていたのです。(1)
 また戦いに負けた時には、人々はその偶像を背負って逃
げるのでした。「自分は捕らわれて行く」(2)は、やがて
バビロンがペルシャ王(クロス王)により征服されることを
示す預言にもなっています。(BC539年)
   それに対して生きておられる真の神様は、「ヤコブの家
よ、…」(3)とイスラエルの民に呼びかけられます。そして、
「イスラエルの家の残ったすべての者よ。」と言われます。
 「残りの者」(新改訳2017)とは、預言者イザヤの独特の
言葉です。イザヤは、長男に「シャル・ヤシュブ」(残りの
者は帰ってくる)と名前を付けています。
    (イザヤ書7章3節p.951、10章22節p.956)
   「残りの者」というのは、バビロン捕囚(BC605-586頃)
による裁きを幸いにも逃れた人たちという意味ではありま
せん。神様の一方的な恵みによって、神様に立ち返り、
忠実に主を信じ、主に従っている民のことです。
  神様が、イスラエルの民一人ひとりを「生れ出た時から」
顧み、導いておられたように、私たち一人ひとりをも「負い」、
「持ち運んで」くださっているのです。(3)

2.神ご自身が私たちを持ち運んでくださる
   伝道の書12章1節(p.932)の「若い日に」は、原語では、
「髪の毛の黒いうちに」と解することができる言葉が
用いられています。
 (「伝道の書」は新改訳2017では「伝道者の書」
  新共同訳聖書では「コヘレトの言葉」と訳されている)
    (「コヘレト」はヘブル語で「集会を招集する者」、
「集会で語る者」という意味)伝道の書12章3-7節(p.932)で
伝道者は、人が年を取る中で体の各部分が衰えていく様子を
いろいろなたとえを用いて語っています。
(例えば「あめんどうの花」(5)の色は白いことから「白髪」を
示している)
  しかし、聖書は単なる「盛者必衰」を説いているのでは
ありません。どんなときにも神様の人間に対する慈しみと
憐みが注がれ続けていることを語っています。
    「事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、
その命令を守れ。これはすべての人の本分である。」
                (伝道の書12章13節p.932)
  たとえ私たちの肉体は弱り、衰えるとしても、自分を
造ってくださった創造者がおられることを知り、
神様と交わりを続けながら歩むとき人生は喜びに満ちた
ものになるのです。
  神様は、イスラエルの民を決して見捨てないで、
持ち運び、必ず負い、救うと約束してくださっているのです。(4)
  1~2節で語られているように偶像には何の力もなく、
人によって持ち運ばれなければなりません。
しかし、主は、私たちを地上の生涯の最後まで、
持ち運び、必ず負い、救ってくださいます。(4)
  さらに神様は、「わたしの計画は成就し、わたしの望む
ことをすべて成し遂げる。」(10)と言われました。
神様は預言者を通してあらかじめ知らせた計画を必ず成し遂げる
と約束しておられるのです。
  この様に言われ、その約束を実現なさる主こそが真の神であり、
ほかに神はいないのです。
  これは直接的には、この後で起こるペルシャ王クロスによる
バビロン捕囚からの解放を意味していました。
  それだけでなく、この預言は神様がイエス・キリストによって
成される大いなる救いの計画の実現を意味しています。
  この大いなる救い(罪と滅びからの救い)は、
主イエスの十字架と復活により成し遂げられました。

結 論) 私たちは、救い主イエス様を知り、信じ、従う者と
されました。そして、神様を神様として崇め、主イエスとの
交わりの中に生かされています。
  主イエスは、地上の生涯の終わりまで、いつも私たちと共に
居て導き、助けくださり、御国に迎えるときまで、守り通して
くださいます。
  私たちを持ち運んでくださる真の神、主イエスを信じ、
従い続けてまいりましょう。

(参考)
『NHKこころの時代 それでも生きる
           コヘレトの言葉』小友 聡
『生きるための幸福論』加賀乙彦 (講談社現代新書)