使徒行伝17章1~15節

そこで、兄弟たちはただちに、パウロとシラスとを、夜の間にベレヤへ送り出した。ふたりはベレヤに到着すると、ユダヤ人の会堂に行った。 ここにいるユダヤ人はテサロニケの者たちよりも素直であって、心から教を受けいれ、果してそのとおりかどうかを知ろうとして、日々聖書を調べていた。使徒17章10-11節 (p.211)

序 論)ピリピを立ち退いたパウロとシラスとテモテは、テサロニケに向かいます。(1)(ピリピからテサロニケまで約150㎞) テサロニケはマケドニヤ州の首都で商業が盛んな町でした。そのためユダヤ人も多く住んでいました。テサロニケ、そして後に宣教したベレヤで起こった出来事とそれらを通して示されることは…

1、聖書が預言しているキリスト
  パウロは、テサロニケでも「ユダヤ人の会堂」(1)で宣教しました。(1-2)
     聖書(旧約聖書)は、メシヤ(キリスト)が来られることを預言しており、主イエスこそユダヤ人の待望していたキリスト(救い主)であることを聖書に基づいて(2)、説明し論証しました。(3)(詩篇22篇p.764、イザヤ書53章p.1021)
  彼らは主イエスの十字架による救いと復活について語ったのです。
    後にパウロはテサロニケ人への手紙で、このとき、「力と聖霊と強い確信とによって」福音を語ったと回顧しています。 (Ⅰテサロニケ1章5節 p.319)
     それによって、主イエスを信じる人たちが起こされました。多くは「信心深いギリシヤ人」(「神を敬うギリシヤ人」新改訳)でした。(4) 少なくない貴婦人も、信じました。  
  そのため、ユダヤ人たちのねたみを買いました。(5)  彼らがならず者たちを集めて暴動を起こしたのは、その原因がキリスト者にあるとの口実を作るためでした。(5)
     ユダヤ人たちは、パウロたちに「カイザルの詔勅にそむいて行動している」と濡れ衣を着せ、迫害し続けます。(7)  (「カイザル」は当時のローマ皇帝のこと)彼らはパウロたちの宣教をローマ帝国の治安を乱す政治運動にすりかえて反逆罪で告訴したのです。
     ユダヤ人たちは、「この連中は、…イエスという別の王がいるなどと言っている」とパウロたちを訴えました。(7)
   これは彼らがパウロたちを訴えるための言い掛かりの言葉でした。しかし、同時に、主イエスがローマ皇帝とは全く違う「別の王」、すなわち全世界の真の王、私たちが心の王座(中心)にお迎えすべきお方であることを示す言葉でもありました。
  彼らの訴えの証拠は挙がらず、捕らえられていた信徒のヤソン(5)たちは、保証金を払って釈放されました。(9)

2、主イエスを証しする聖書
  テサロニケの兄弟たちは、パウロとシラスを夜の間に、ベレヤに送り出しました。(10a)
  ベレヤは、テサロニケから西へ約80㎞の距離にある町でした。そこでもパウロたちは、ユダヤ人の会堂で福音を語ります。(10b)
     幸いにもこの町のユダヤ人たちはパウロの説教を素直に聞きました。そして、その通りかどうかと自分たちで日々聖書(旧約聖書)を調べ、その結果ユダヤ人もギリシヤ人も多くの人たちが主イエスを信じました。(11-12)
     しかし、テサロニケのユダヤ人はベレヤまでパウロたちを追ってきて群衆を騒がせました。(13)
  このことからも福音をパウロたちが伝えていたことが、保守的なユダヤ人たちにいかに大きな危機感を与えていたかが分かります。
     その後、シラスとテモテをベレヤに残して、パウロは兄弟たちと共にアテネに船で渡りました。アテネは当時のギリシヤ文化の中心地でした。(14-15)

結 論) ベレヤの人たちは「心から教えを受け入れ」(「非常に熱心にみことばを受け入れ」新改訳2017)(11)、とあるようにパウロの語る福音を真剣に聞いたのです。そして、毎日、聖書を調べていました。
  ベレヤの人たちが読み、調べていた聖書は旧約聖書ですが、今、私たちには旧約、新約、両方の聖書が与えられています。これは大きな恵みです。では旧新約聖書を読むのは何のためでしょう。
  主イエスは、「あなたがたは、聖書の中に永遠の命があると思って調べているが、この聖書は、わたしについてあかしをするものである。 しかも、あなたがたは、命を得るためにわたしのもとにこようともしない。」と言われます。 (ヨハネによる福音書5章39-40節 p.144)
  聖書を読み、調べることを通して、主イエスのもとに行くこと、主イエスがどのようなお方かを知り、主への信仰が強められること、主に結び合わされて永遠の命に生かされることが最も大切なのです。
  日々、聖書の通読、精読を続けながら、主イエスとの交わりを持ち、主の恵みとご愛をいただいて歩みましょう。

(参考)
  『聖書通読にチャレンジしよう』
             (下川友也著、いのちのことば社)