ここで夜、パウロは一つの幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願するのであった。 パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。
使徒16章9-10節 (p.208)
序 論) この章では、パウロの第二回伝道旅行の様子が記されています。パウロはルステラでテモテという青年に出会います。(1)パウロは、シラス、テモテと共に小アジヤ(現在のトルコ共和国)で伝道して行きます。その後、起こった出来事とそれを通して示されることは…
1、主の御霊(聖霊)の導き
途中、聖霊は彼らがアジヤで福音を語ることを二度も禁じられます。(6-7)
具体的にどのような形でそれが示されたのかはわかりません。パウロが病気になったのではないかという説もあります。当初、彼らが目指していたトルコ北部のビテニヤ地方への道は閉ざされました。
パウロたちは、聖霊の導きに従い、西方に向かいます。 そして、ムシヤを通過し、エーゲ海東岸の海港であるトロアスに着きました。(8) このとき、パウロの一行はなぜ自分たちがこの町に導かれたのかまだ悟っていませんでした。(ルステラからトロアスまでの道のりは約700キロメートル)
ここでパウロは幻を見ます。ひとりのマケドニヤ人が、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けてください。」(9)と訴えました。
パウロは、この幻を通して、神様が自分たちをマケドニヤ宣教に招いておられると確信します。(10)
この10節から、「わたしたち」という主語が出てきます。これは、使徒行伝の著者であるルカが一行に加わり、語り手となったことを示しています。
主イエスの御霊(聖霊)が、パウロたちの計画していた道を妨げ、彼らを行くべき道に導かれたように、主イエスは、私たちの人生の歩みも導いてくださっているのです。
2、主が彼女の心を開いたので
パウロの一行は、トロアスを船出してエーゲ海を渡り、ネアポリス(マケドニヤ)に上陸しました。(11)
ここからヨーロッパ宣教の第一歩を記すことになったのです。
その後、彼らはマケドニヤのこの地方の第一の都市ピリピに数日間滞在しました。(12)
安息日に川のほとりで、パウロは集まって来た婦人たちに福音を語っていました。(13)その中に、紫布の商人ルデヤという婦人がいました。彼女はテアテラ市出身で「神を敬う」異邦人でした。(14)
(テアテラ市は小アジヤのエペソの北にある町(ヨハネの黙示録1章11節、2章18節参照)
主イエスは彼女の心を開かれ、福音の内容に真剣に耳を傾けるようにされました。(14) 彼女は、主イエスを信じました。
ルデヤもその家族も、信仰告白してバプテスマ(洗礼)を受けました。そして、パウロたちを自宅に招きました。(15)
ルデヤの家がピリピで最初の「家の教会」となったことでしょう。
結 論) このときは、小アジヤへの伝道は禁じられましたが、後に神様はアジヤの地での伝道の道を開かれました。(使徒19章10節 p.214)
宣教の働きは神様ご自身が導かれ、進めておられます。
私たちの目には、道が閉ざされてしまったとか、失敗に思えるようなことがあっても、神様は私たちの思いをはるかに超える大きな計画をもって私たちを導いておられるのです。
「人の心には多くの計画がある、しかしただ主の、み旨だけが堅く立つ。」 (箴言19章21節 p.903)
「マケドニヤ人の叫び」(救いを求める心の声)は、今も世界中から聞こえてきます。その心の渇きを満たしてくださるのは、三位一体の神様(父なる神、御子イエス様、聖霊) だけなのです。
今も神様は一人ひとりの心に働きかけ、語りかけておられます。
聖書は、主イエスに救われ、共に歩んでくださっている幸いを知る者は、その喜びを伝える使命が与えられていることを教えています。
私たちの周りの、救いを求めている人々の声を聞き取り、イエス・キリストを伝える者となりましょう。