ルカによる福音書20章45~47節

  「よく聞きなさい。あの貧しいやもめはだれよりもたくさん入れたのだ。 これらの人たちはみな、ありあまる中から献金を投げ入れたが、あの婦人は、その乏しい中から、持っている生活費全部を入れたからである。」      ルカ21章3-4節(p.126)

序 論)
  エルサレムの神殿で、宗教指導者たちとの一連の問答を終えられたイエス様は、弟子たちに対して、律法学者 の生き方にならわないように警告されます(20章46-47)。その後、律法学者たちと貧しいやもめの献金する様子を見られたイエス様は、さらに弟子たちに語られます。語られたことを通して示されることは…

本 論) 1.神様への感謝をもって献げた
  イエス様は律法学者たちのどのような点を非難されたのでしょう。それは、「見えのために」(47)とあるように神様よりも、人の目を最も気にしていたことです。
  彼らは長い衣を着たがり、人から挨拶されることや上席に座ることを好み、長い立派な祈りをする等、人の評価を気にしていました。また、身寄りのないやもめたちを保護する配慮を欠き、彼女たちに浄罪を求めたりもてなしを受けたりして経済的に苦しめていました。イエス様は弟子たちに彼らのようにならないように「律法学者に気をつけなさい。」(46)と言われます。彼らは、人に見られるために義を行う偽善者でした。
  イエス様は、彼らの偽善を厳しく指摘されます。(マタイによる福音書23章13-36節 p.37)
  次にイエス様は、金持ちたちが宮で献げ物をするのを見られました。袋から取り出された硬貨が大きな音をたてて 「さい銭箱」(1)(この時代のユダヤではトランペット状の口がついていた)に投げ入れられます。周囲の人々は思わず振り向いたことでしょう。彼らは、有り余る中から投げ入れたのです。彼らも律法学者たちのように「見えのために」  (47)献金し、得意になっていました。
  その後にひとりのやもめが来て、誰に知られることもなく、そっと献げ物をしました。彼女がささげたものは、レプタ銅貨二つでした。これは当時、ごくわずかの金額であり、献金として認められる最低限度の額でした。
  しかし、イエス様は、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめはだれよりもたくさん入れたのだ。」(3)と言われます。
  神様は私たちがどのような心で献げものをするかを見ておられます。神様はやもめの心を見て喜ばれました。それはどんな心だったのでしょうか。
  それは、日用の糧を与えて下さる神様への感謝と信頼の心です。もう一つは献身の心です。彼女は明日からの生活のことを心配しませんでした。これまで生活を守って下さった神様に感謝しつつ、これからも助けて下さるという信頼をもって献金しました。それは全生活をあなたに委ねますという献身の思いの表われだったのです。

  2. すべてを献げられたイエス様
 このやもめの献金は、隠れたことを見ておられる神様 (マタイによる福音書6章6節 p.8)の御前でなされたことでしたが、神の御子イエス様は、彼女の事情も、その心もすべてご存じで、彼女の行いを正しく評価して下さいました。そして、彼女の献げものの意味を弟子たちに明らかにされました。 「これらの人たちはみな、ありあまる中から献金を投げ入れたが、あの婦人は、その乏しい中から、持っている生活費全部を入れたからである。」(4) 「生活費(ビオス)」は、「生計、財産」の意味がありますが、元来は「人生、生涯、生活ぶり」を表す言葉です。 (Ⅰテモテ2章2節の「安らかで静かな一生」の「一生」 の元の言葉は「ビオス」) このときイエス様には、ご自身が十字架に架かられる日が近づいていました。 イエス様は彼女が生活費全部を神様に委ね、献げる姿に この後、神様にご自身のすべてを献げることを重ねて見つめておられたのではないでしょうか。
 神様の人を救うご計画の完成のために、イエス様はご自身の命を、十字架の上にささげて下さいました。それによってイエス様を信じる人は罪赦され、新しくされ、永遠の命に生かされる道が開かれたのです。

結 論)
  私たちが持っているすべてのものは、元々は神様からいただいたものです。献金は人の目を気にしてするものではなく、神様に感謝して自由にお献げするものです。 このやもめは神様に心を向けて、自分が日々受けている恵みに対する感謝に溢れていました。2レプタも神様と人のために使っていただきたいと願って献げたことでしょう。
 これは、神様への献身の思いから喜んでなされたことでした。このような心からの感謝と献身の思いの献げものは、 どんなに少額であっても神様の御前に尊いのです。  私たちも日用の糧を日々与え、独り子イエス様を与えて 下さった神様のご愛と恵みに応答し、感謝の心をもって、 献身(奉仕、献げもの)をさせていただきましょう。