ルカによる福音書20章41~44節

 ダビデ自身が詩篇の中で言っている、『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足台とする時までは、わたしの右に座していなさい』。このように、ダビデはキリストを主と呼んでいる。…      ルカ20章42-44節 (p.125)

序 論)
  ルカ20章には、受難週に宮(神殿)の中で起こった イエス様と宗教指導者たちとの間の論争が記されています。今回の箇所は、その最後のやり取りであり、イエス様が彼 らに問いかけられます。主イエスの言葉と引用された詩篇 110篇(旧約聖書p.848)の言葉が示していることは…

本 論) 1.キリストはダビデの子か、ダビデの主か
  ダビデは、イスラエル王国の栄光と繁栄の基礎を築いた王です。(BC1010年頃)
イエス様が地上に来られたとき、当時のユダヤ人たちは、 救い主キリストはダビデの子(41)、ダビデの子孫としてお生まれになると信じ、待ち望んでいました。しかし、宗教指導者たちはイエス様を救い主だと信じ、受け入れることができませんでした。人々も「ダビデの子」は、ローマ帝国の圧政から解放してくれる軍事的政治的メシア(救い主) を期待していたのです。(このことが後のAD70年のユダヤ人たちの亡国につながる)
 次にイエス様は、詩篇110篇1節を引用されます。「 主は、わが主に仰せになった、…」(42-43)と告げるように、二度、「主」という言葉が出てきます。最初の「主」は父なる神様のことです。二番目の「主」は、救い主イエス・キリストのことです。つまり、王であり詩人であるダビデが、「父なる神様が、私の主であるイエス・キリストにお告げになった、…」と歌っているのです。  実際にイエス様はダビデの子孫としてお生まれになりました。でも、ダビデが「わが主」と仰ぎ見るほどのお方なのです。「ダビデの子」でありながら、「ダビデにとっての主」である救い主とはどういうことなのでしょうか。(44)
  このようにイエス様は、宗教指導者たちとのやり取りの中で詩篇110篇の言葉を引用し、ダビデ自身が、救い主キリストを「わが主」と呼んでいることに目を向けさせておられました。イエス様は、彼らにダビデが主とよんでおられるキリストはあなたがたにとっても主ではないのかと問うておられたのです。  彼らはイエス様の問いに答えることができませんでした。このときは、まだ弟子たちもはっきりとは分かっていませんでした。救い主キリストはダビデの子(子孫)であると漠然とは考え、信じていたけれども、本当はどういうお方なのか。その問いに適切に答えられる人は誰もいなかったのです。
 今回の聖書箇所では、イエス様はこの問いを出されるだけで終わっています。

2. 父なる神様はイエス様を復活させられ、右の座に着かせられた
 その保留された答えが、イエス様の十字架の死と復活の後、使徒行伝2章の、ペテロの説教の中で明らかにされます。イエス様が十字架にかかられて死なれ、復活され、弟子たちと40日間共に過ごされました。その後、天にあげられました。地上に残された弟子たちは祈ります。主は弟子たちに聖霊を注がれ、ペテロが代表して語ります。
 ペテロは、イエス様が引用された同じ詩篇110篇を引用して説教しました。(使徒行伝2章32-36節 p.183) 「このイエスを、神はよみがえらせた。…あなたがたが十字架につけたこのイエスを、神は、主またキリストとしてお立てになったのである。」
 神様がイエス様を復活させられ主とされました。私たち人間が決めたのではありません。神が十字架で死なれよみがえられたイエス様によって、私たちの罪を赦し、罪から 救って下さいました。
  父なる神様は、復活されたイエス様を天にあげられ、ご自分の右の座に着かせられました。(「右」は一番近い所を  示す)
  今も、イエス様は生きておられ、私たちのために、とりなし、祈って下さっています。 (ローマ人への手紙8章34節 p.244)

結 論)
  ダビデが預言したことは、イエス様の十字架の死と復活、昇天によって実現しました。神様がイエス様を通して成された救いのみわざによって、私たちに罪の赦しの恵みが与えられ、新しい命、永遠の命に生きる希望が与えらのです。 ダビデが、「わが主」と呼んだ、イエス様は、私たちにとっても、「わたしの神、わたしの主」です。「イエス様、あなたこそ、神の御子、わたしの救い主です.。わたしはあなたを信じ、心に受け入れます」と信仰告白いたしましょ う。「ダビデの子孫として生れ、死人のうちからよみがえ ったイエス・キリストを、いつも思っていなさい。これが わたしの福音である。」 (テモテへの第二の手紙2章8節 p.334)
すべてを支配しておられる王の王、主の主、この私を変わることなく愛しておられるイエス様に、心を向け、仰ぎ見つつ歩みましょう。