ルカによる福音書2章1~7節

 ところが、彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。         ルカ2章6-7節 (p.85)

序 論)
  ローマ帝国の初代皇帝アウグスト(1)は、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)亡き後の内戦を鎮圧して、「ローマの平和」を確立した人物です。この人の成し遂げたローマ帝国統一と交通網の整備のおかげで、後に使徒パウロたちが、ギリシャ、ローマまで自由に旅をしてキリストの福音を伝えることができました。 イエス様は、この皇帝アウグスト(オクタビアヌス)(BC 63-AD14、在位BC27-AD14)の治世の時代に、地上に誕生されました。 ご降誕の経緯と私たちに示されることは…

本 論) 1.神様の御手による導き
  皇帝アウグストが「全世界の人口調査をせよとの勅令」 (1)を出しました。その目的は、住民登録と人頭税の課税、 そして戦時における徴兵のためでした。
 その勅令によって、ガリラヤのナザレに住んでいたヨセフとマリヤは、遠いユダヤのベツレヘムまで旅をしました。 それは約140キロメートルの道のりであり、身重の体のマリヤにとっては困難な旅だったことでしょう。 旧約聖書の中でキリスト(救い主)はダビデの子孫として生まれ(サムエル記下7章12-13節)、「ダビデの町」(4)ベツレヘムに生まれる(ミカ書5章2節)と預言されています。
「あなたが日が満ちて、先祖たちと共に眠る時、わたしはあなたの身から出る子を、あなたのあとに立てて、その王国を堅くするであろう。 彼はわたしの名のために家を建てる。わたしは長くその国の位を堅くしよう。」  (サムエル記下7章12-13節 p.441)
「しかしベツレヘム・エフラタよ、あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが、イスラエルを治める者があなたのうちからわたしのために出る。その出るのは昔から、いにしえの日からである。」 (ミカ書5章2節 p.1288)
すなわち皇帝の勅令とヨセフの行動とは、図らずも神様のご計画と導きの中で旧約聖書の預言を成就することにつながっていきました。 皇帝アウグストやシリヤの総督クレニオは、ヨセフとマリヤのことは全く知りませんでした。しかし、神の御手は当時の権力者を通して、救い主がベツレヘムで誕生されるように導かれたのです。
  このことを通しても示されているように、世界の歴史やすべてのことを本当に支配し、導き、用いておられたのは主なる神様なのです。神様は今、私たちに働きかけ、それぞれの人生の歩みも目に見えない御手をもって導いておられるのです。

2. 低きに降られた神の御子
  「月が満ちて」(6)は、マリヤが臨月に入ったことを示すと共に、神様の約束の成就、神の時の到来をも指し示しています。
  救い主は「飼葉おけ」(7)で誕生されました。当時のそれは、石の床を掘った浅い穴であったと言われています。
 誰もそこに真の王、救い主がお生まれになったとは思わない低い貧しい場所からイエス様のご生涯は始まりました。
 父なる神様と共におられた御子が、その栄光の座を捨てて、最も低いところにお生まれになったのです。それは、人間としてすべての苦しみを体験され、貧しい者、取るに足りないと思われていた者、弱い者たちを訪ねて行かれるためでした。
  では、なぜ救い主の誕生が「飼葉おけ」だったのでしょうか。それは「客間には彼らのいる余地がなかった」(7) からでした。(当時の客間(「宿屋」(新改訳))、1階を家畜用のスペース2階を客間としていました。) 「余地がなかった」という言葉はイエス様が来られた「この世」や人の心を象徴しています。当時のイスラエルのほとんどの人たちはイエス様を神の御子、救い主として受け入れませんでした。そして、イエス様を十字架に追いやったのです。このように「飼葉おけ」は、イエス様がこれから歩まれるご生涯と、その最後の十字架の死を暗示しています。
  「彼(イエス様)は自分のところ(ユダヤ)にきたのに、自分の民(イスラエルの民)は彼を受けいれなかった。」 (ヨハネによる福音書1章11節 p.135)
  イエス様は、私たちを罪から救うために最も低い十字架にまで降って下さいました。
しかし、父なる神様はイエス様を死から復活させられ、永遠の神の御子、救い主としてお立てになったのです。

結 論)
  復活され、今も生きておられるイエス様は、私たち一人ひとりを訪ね、心の戸を叩いておられます。
 「しかし、彼を受けいれた者、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子となる力を与えたのである。」       (ヨハネによる福音書1章12節 p.135)
心を開き、「イエス様、あなたを信じ、心に受け入れます。私の心にお宿り下さい」と告白し、心の王座(心の中心)にお迎えしましょう。